遠藤印刷 代表の遠藤です。日商簿記2級を保有し、大手ゼネコンでの施工管理経験を活かした徹底的な品質・工程と工数管理を強みとしています。創業55年の現場力を活かし、お客様の印刷業務における効率化とコスト最適化の支援に日々邁進しております。
本記事は、印刷発注が本業ではない担当者向けに、ネット印刷と近場の印刷会社の使い分け基準を「価格」ではなく「手戻りリスクと作業工数削減」で整理します。差し替えが起きた瞬間に総コストが反転する理由と、千代田区飯田橋で外注先選びを失敗しない型を解説します。
使い分けは「単価」ではなく変更数で決める
ネット印刷は、仕様が型に収まるほど強く、近場の印刷会社は、仕様が揺れるほど強いです。一般的にはネット印刷は低コスト・標準仕様に強く、地元印刷会社は細かな調整や特殊要件に強いと整理されます。(no-b.co.jp)
ここでいう「仕様が揺れる」とは、ページ数や部数、納期、差し替え、搬入条件などの変数が増える状態です。変数が増えるほど、担当者側の確認作業が増え、ミスの入口が増えます。つまり、外注先選びの本質は「印刷費の比較」ではなく「不確実性を誰が吸収するか」の配分です。
- 期限までに、必要部数を、要件どおりに揃える
- ミスや差し戻しで、自分の作業時間を溶かさない
- 上長や関係者に「なぜそうしたか」を説明できる形で進める
失敗しない進行と作業工数削減がこれからのビジネスシーンを加速する鍵になります。
なぜネット印刷は便利なのか:標準化の優位性
ネット印刷の強みは、工程が標準化されていることです。
- 注文フローが固定され、入力項目も定型
- 仕様のバリエーションが絞られている
- 入稿データのルールが明確で、自動チェックが効く
この設計は、定型案件の処理速度と価格競争力を上げます。言い換えると、ネット印刷は「発注者が決めるべきことを、あらかじめ型として配列している」サービスです。型にハマる限り、非常に強いです。
なぜ近場の印刷会社が効くのか:不確実性の許容
近場の印刷会社の価値は、印刷そのものより「揺れの吸収」にあります。
- 差し替えや修正の相談ができる
- 仕様が固まっていない段階で、決める順番を整理できる
- 搬入や分納、製本など、周辺タスクまで含めて段取りできる
あなたの失敗談の核心はここです。ネット印刷が悪いのではなく、社内の伝達漏れで差し替えが発生したとき、注文変更が難しく「二重発注」になり、使えない印刷物の破棄と手間が増えた。これは典型的に「変数が増えた瞬間に、担当者側の負担が跳ね上がる」現象です。
1分で決める「使い分け基準」早見表
| 判断軸 | ネット印刷が向く | 近場の印刷会社が向く |
|---|---|---|
| 仕様の確定度 | 仕様が完全に固い | 仕様が揺れる、相談が必要 |
| 差し替え可能性 | まず起きない設計 | 起きうる前提で進めたい |
| 校正 | なし、または1回で終わる | 複数回・関係者が多い |
| 加工・段取り | 定型の範囲 | 製本・分納・搬入など複合 |
| 失敗の影響 | 多少のやり直し可 | 提出・当日配布など失敗不可 |
ポイントは「印刷の種類」ではなく「進行の状態」です。定型のチラシでも、差し替えが起きる運用なら近場の印刷会社へ依頼するのが無難です。
印刷の失敗は「品質コスト」
ここでは、比較軸を一段上げます。製造やサービスの世界では、品質に関わる損失を「Cost of Quality(品質コスト)」として扱い、手戻りや廃棄を“見えないコスト”にしない考え方があります。ASQはCOPQ(Cost of Poor Quality)を「品質が悪いことによって発生するコスト」と定義し、内部失敗(出荷前の手直し・廃棄)と外部失敗(顧客側で発覚する不具合対応)に分けています。
さらに、研究要約として、製造業で「品質不良のコスト」が売上の5〜35%の範囲に及ぶ可能性がある、という指摘もあります。(産業およびシステム工学協会)
印刷発注に置き換えると、二重発注・刷り直し・社内調整・謝罪対応は、まさに「品質コスト」です。印刷費だけ見ているとこのコストが消えて見えます。
試算例:差し替え1回で「総コスト」が反転することがある
ここから意思決定を助けるための試算モデルを作成してシュミレーションします。
金額や時間は例で、案件と外注先により変動します。
前提として、担当者の時間単価を保守的に「短時間労働者の平均時給 1,476円」と置きます(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査の概況」)。
フルタイムの担当者なら、実際の時間コストはこれより大きくなる可能性が高いので、以下は控えめな見積りです。
例:定型チラシ(印刷費2万円相当)を想定
- ネット印刷:発注作業 0.5時間、差し替えが間に合わず再注文になると印刷費が追加で発生しうる
- 近場印刷会社:打合せ 0.8時間、差し替えは追加費用で対応できる場合がある(可否は要確認)
総コスト試算(円)
注:下記は意思決定用の「試算例」です。実際の金額・工数・差し替え費用は案件や条件により変動します。
| ケース | ネット印刷 | 近場 |
|---|---|---|
| 差し替えなし | 20,000 + 0.5h×1,476 = 20,738 | 30,000 + 0.8h×1,476 = 31,181 |
| 差し替え1回 | 40,000 + 1.0h×1,476 = 41,476 | 30,000 +(差し替え費6,000)+ 1.0h×1,476 = 37,476 |
差し替えなし
差し替え1回
差し替えが1回混ざるだけで、単価の優位が溶ける局面がある。だから、発注者の現実に合う外注先選びが「作業工数削減」になります。
千代田区で起きやすい「外注ミス」の3パターン
千代田区エリアは官公庁・本社機能・大学・学会などが集まり、期限固定の資料が多い環境です。そこで起きやすいのは、次のタイプのミスです。
- 関係者が多く、最終版の定義が崩れる場合
「最終_final_最終2」問題です。最終がいつどの場面で発生したか分からないファイルネームになっていることがあります。
ネット印刷は型に強い一方、版の揺れを吸収する設計ではありません。 - 仕様が未確定のまま注文に入ってしまう
ページ数、部数、製本、搬入条件が揃っていないと、要件ミスが出ます。別領域ですが、要件の誤りが手戻りコストの主要因になるという研究指摘は繰り返し出ています。(pmi.org)
3.「印刷+段取り」が見積に含まれていない
分納、会場搬入、封入、宛名、予備の考え方など。ここが見落ちると、印刷後に担当者のタスクが爆発的に増加します。
現実解:ハイブリッド運用が最も合理的
ここまで読んでいただいた方ならお察しがついていると思います。
あなたの結論は、現場感として正しいです。
- 定型で、差し替えが起きにくいものはネット印刷
- 差し替えや修正が起きるもの、失敗できないものは近場の印刷会社
これは「どちらが優れているか」ではなく、案件の状態に合わせて外注先を切り替える運用設計です。
最後に
ネット印刷で解決案件は、そのままで構いません。
問題は「定義が揺れる案件」を担当者が一人で抱えるときです。
千代田区で、差し替え前提の印刷外注先をお探しでしたら、まずは上のテンプレを貼って、現状を投げかけてください。
Q&A
Q1. ネット印刷でも差し替えに強いサービスはありますか?
A1. サービス仕様により異なります。注文後の変更可否、校正工程の有無、締切ルールを必ず確認してください。
Q2. 近場の印刷会社に頼むと、結局高くつきませんか?
A2. 印刷費は高く見えることがあります。ただし手戻り、社内調整、搬入などを含む総コストで逆転するケースがあるため、案件の変数で判断するのが合理的です。(ASQ)
Q3. 「仕様が揺れている」とは、どの状態ですか?
A3. 納期、部数、ページ数、差し替え、校正回数、搬入条件のいずれかが未確定、または変更が起きうる状態です。
Q4. 作業工数削減を社内で説明するコツは?
A4. 印刷費ではなく「担当者時間」と「手戻りの再発防止」を根拠にします。時間単価は公的統計(例:平均時給)で置くと説明が通りやすいです。
Q5. まず何を決めれば、外注先選びが早くなりますか?
A5. 目的、必達納期、部数の確定度、差し替え可能性、納品条件の5点です。これだけで外注先の向き不向きがほぼ決まります。
関連記事
※本記事の情報を利用したことにより生じた損害(直接・間接を問わず)について、当方は一切の責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。


